ChatGPTを社員に使わせていいか。禁止する前に決める3つのこと
結論から、いきます。全面禁止は、もう現実的ではありません。禁止しても、個人のスマホと個人のアカウントで使われます。しかも、会社からは見えなくなります。
「社員にChatGPTを使わせていいのか」——最近いちばん多い相談のひとつです。
わかります。情報が漏れたらどうしよう、間違った答えを信じたらどうしよう。心配になるのが普通です。
でも、いちばん危ないのは「禁止するか、許可するか」ではありません。何も決めていない状態です。
今日は、A4半分で作れるルールを丸ごと置いていきます。
なぜ、全面禁止がうまくいかないのか
禁止すると、こうなります。
① 家のスマホで使う
会社のPCで使えないだけです。同じ資料を、個人のアカウントに打ち込みます。会社は把握できません。
② 使っていることを言わなくなる
これがいちばん困ります。AIが出した文章を、確認せずにそのまま客先に送っていても、誰も気づきません。
③ 差がつく
同業が使い始めているのに、自社だけ手作業のまま。見積の回答が半日遅れる。それが積み重なります。
禁止は「使わせない」ではなく「見えなくする」だけなんです。
じゃあ、何を決めればいいのか
3つだけです。
① どこに入れるか、を決める
ここでよくある間違いを先に潰します。
「見積の金額も、図面も、顧客名も入れてはいけない」——これは行きすぎです。
そう決めると、AIでできることがほとんど残りません。請求書も図面も見積も扱えないなら、事務作業は1つも減りません。実際、私が作って納めているものは、図面を読ませて指示書を作る、手書きの伝票から金額を読み取って請求書にする——まさにその情報を扱うものです。
分かれ目は「何を入れるか」ではなく、「どこに入れるか」です。
| 入れる先 | 入力の扱い |
|---|---|
| 無料版・個人向けプランのWeb画面 | 既定で学習に使われることがある。設定でオフにできる |
| 法人向けプラン | 既定で学習に使われない |
| API経由で自社のツールに組み込む | 既定で学習に使われない |
⚠ 仕様は変わります。必ずご自身のアカウントの設定画面で確認してください(手順は後述します)。
つまり、こう決めれば足ります。
① 無料版・個人アカウントのWeb画面には、社外に出て困るものを入れない ② 業務でそれらを扱うなら、法人プランかAPI(自社ツール)を使う
①だけで運用するなら、入れないのはこのあたりです。
- お客さんの実名・社名が入ったもの
- 見積・原価・単価の具体的な金額
- 図面・仕様書
- 人事評価に関すること
迷ったときの基準はこれ1つです。
「これが外に出たら困るか」
⚠ ただし、これは「その情報をAIで扱えない」という意味ではありません。 扱う先を変えれば済む話です。「うちの業務では、この情報を扱えないと意味がない」という場合は、禁止するのではなく、法人プランか自社ツールを検討してください。そちらのほうが、結果的に効果が出ます。
⚠ 逆に、気にしすぎなくていいものもあります。社外に出しても問題ない一般的な相談、自社が書いた文章の言い換え、メールの下書き。ここまで禁止すると、何も使えなくなります。
② 使っていい業務を決める
「判断が要らない仕事」から始めてください。
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| メール・案内文の下書き | 最終判断(誰に売るか、いくらにするか) |
| 長い文章の要約 | 交渉の内容そのもの |
| 言い方の言い換え | 事実を調べること(間違えます) |
| 議事録の整形 | お客さんへの謝罪文(そのまま送らない) |
⚠ 「調べもの」に使うのは、いちばん危ないです。AIは、それらしい嘘を自信満々に書きます。法律・制度・数字を聞いたときは、必ず一次資料で確認してください。
③ 出てきたものを、誰が確認するか決める
これを決めないと、①と②が意味を失います。
「AIが作ったものは、必ず人が目を通してから外に出す」——これを1行、書いておくだけで十分です。
誰が見るかも決めてください。本人が見るのか、上長が見るのか。決まっていないと、誰も見ません。
入力が学習に使われるかは、自分で確認してください
ここ、記事や人から聞いた話で判断しないほうがいいです。プランによって違い、しかも仕様が変わります。
大まかにはこうです。
- 個人向けのプラン … 既定で学習に使われることがある。設定でオフにできる
- 法人向けのプラン・API経由 … 既定で学習に使われないのが一般的
確認する手順はこれだけです。
- ChatGPTにログインする
- 右上のアカウントから 設定
- データコントロール(Data controls)を開く
- 「すべての人のためにモデルを改善する」のような項目を見る
今どうなっているかが、そこに書いてあります。⚠ 記事を読んで安心するのではなく、自分のアカウントの画面を開いて、目で見てください。私もそうしています。
社内で複数人が使うなら、全員の設定を1回ずつ確認したほうが確実です。1人5分もかかりません。
ルールは、A4半分で足ります
長い規程を作ろうとすると、作っている途中で終わります。紙1枚の半分で十分です。
【生成AIの使い方】
■ 使っていい場所
・個人のアカウント(無料版)… 下の「入れないもの」を守る
・会社で契約した法人プラン … 業務の情報を扱ってよい
・自社のツール(API経由) … 同上
■ 個人のアカウントには入れないもの
・お客さんの実名/社名
・見積・原価・単価の金額
・図面/仕様書
・人事に関すること
→ 迷ったら「外に出たら困るか」で判断
→ 業務でこれらを扱う必要があるなら、禁止ではなく上の「法人プラン」へ
■ 使っていい仕事
・下書き/要約/言い換え/整形
→ 最終判断と、事実調べには使わない
■ 出す前に
・AIが作ったものは、必ず ______ が目を通す
■ 設定
・学習オフになっているか、各自で確認する
これを配って、朝礼で3分説明すれば終わりです。
それでも不安が残る場合
使う場所を1つに絞るという手があります。
たとえば「議事録の整形だけ」「メールの下書きだけ」。1つの業務で3か月やってみて、問題が起きなければ次を足す。
いきなり全社・全業務で解禁するより、ずっと安全です。しかもその3か月で、何が向いていて何が向いていないかが、社内の実感として溜まります。
どの業務から始めるかの選び方は、中小企業のAI導入、どこから手をつけるかに条件を3つ書いています。費用をかけて何か入れる前に読むなら、AI導入にいくらまで出していいかのほうもどうぞ。
今日、やること
上のA4半分を、コピーして社内に配ってください。空欄は1か所だけです。
■ 出す前に
・AIが作ったものは、必ず ______ が目を通す
ここに名前を入れるだけで、ルールになります。
完璧な規程を作る必要はありません。「何も決まっていない」から「決まっている」に変わることのほうが、はるかに大きいんです。応援しています。
よくある質問
ChatGPTの業務利用は禁止すべきですか?
全面禁止は現実的ではありません。禁止しても個人のスマホやアカウントで使われ、しかも会社が把握できない形になります。隠れて使われるほうが危険です。危ないのは禁止か許可かではなく、何も決めていない状態です。入れてはいけない情報・使っていい業務・出てきたものを誰が確認するか、この3つだけ決めれば、A4半分で足ります。
入力した内容は、AIの学習に使われてしまうのですか?
プランと設定によります。個人向けのプランは既定で学習に使われることがあり、設定画面の「データコントロール」でオフにできます。法人向けのプランやAPI経由の利用は、既定で学習に使われないのが一般的です。ただし仕様は変わりますので、必ず自分のアカウントの設定画面を開いて、今どうなっているかを目で確認してください。記事や人から聞いた話で判断しないことをおすすめします。
何を入力してはいけませんか?
「何を入れるか」より先に、「どこに入れるか」を決めてください。個人アカウントの無料版なら、顧客の実名、見積や原価の金額、図面、人事評価は入れないほうが安全です。ただしこれは「その情報をAIで扱えない」という意味ではありません。法人向けプランやAPI経由で自社のツールに組み込む場合は、既定で学習に使われません。図面の検索や請求書の自動作成は、そうやって実現しています。業務で必要なら、禁止するのではなく扱える場所を用意するのが答えです。
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