中小企業のAI導入事例。7つを自分で作って納めました
中小企業診断士が、実際に作って納品したものです。 作業が前と後でどう変わるかまで書きました。 「AIで効率化しましょう」で終わる提案はしません。 設計から開発・納品まで、診断士自身が担当します。
いちばん多い失敗は、道具を先に決めることです。 「話題のツールを入れたが、誰も使っていない」という状態は、 だいたい課題ではなく道具から入っています。
先に見るのは「どの作業に、月いくらかかっているか」です。 そこを数字にしてから、金額の大きい順に手をつけます。 既製品で足りる領域は、既製品を勧めます。 作らないほうが安く済むことは珍しくありません。
作ったもの
01請求書の自動作成
手書き伝票を見ながらExcelに1件ずつ入力し、そこから請求書を作る。月末に丸1日〜数日
スマホで伝票を撮る → AI-OCRが読み取る → 台帳に入る → 請求書PDFが出る
向いている会社:手書きや紙の伝票が残っている会社。取引先ごとに請求書の様式が違う会社
どう作ったか:スマホのカメラで撮った画像を AI-OCR に渡し、品番・数量・単価を拾って台帳に書き込む。取引先ごとの様式は、ひな形を登録して差し込む形にした。⚠ 手書きのクセは会社ごとに違うので、最初の1か月は人が見て直す前提で組む。
考え方を詳しく:町工場の請求書づくり、AIでどこまで自動化できるか
02図面・帳票の検索システム
ファイルサーバーや棚を探し回る。「あの図面どこだっけ」で毎回止まる
品番・客先・年度などから即座に呼び出す。過去分もまとめて対象にできる
向いている会社:図面や仕様書が数千枚あり、探す人が特定の1人に偏っている製造業
どう作ったか:ファイル名だけでは探せないので、図面の中身(品番・客先・日付)を読み取って索引を作る。過去分はまとめて一度だけ取り込む。⚠ ファイルの置き場所を先に1か所にする。ここを飛ばすと、検索できないファイルが残る。
考え方を詳しく:図面管理システムの自作。決めるのは3つだけです
03図面から作業指示書を自動作成
図面を見ながら、指示書を手で書き起こす。書く人によって内容がぶれる
図面を読み取って指示書の下書きを生成する。人は確認と修正だけ
向いている会社:同種の加工を繰り返していて、指示書の作成がベテランに集中している会社
どう作ったか:過去の指示書を見本にして、図面から下書きを作らせる。人が確認して直す前提で組む。⚠ 判断が入る工程は自動化しない。ここを欲張ると、確認の手間のほうが増える。
考え方を詳しく:AIツールは既製品か、自社で作るか
04かんたん売上入力
日報や伝票を回収して、あとから誰かがまとめて入力する。集計は月次
スマホから入力 → スプレッドシートへ自動集計。その日のうちに数字が見える
向いている会社:現場が分散していて、数字が上がってくるのが遅い会社
どう作ったか:入力項目を極限まで削って、スマホの1画面に収める。送ったものはスプレッドシートにそのまま積み上がり、集計は関数で自動。⚠ 項目が多いほど入力されなくなる。「あれば便利」で足した列が、その仕組みを死なせる。
考え方を詳しく:Excelでやっていた集計を自動化する、最初の一歩
05撮るだけ精算
領収書を貼って、金額を書いて、申請書を出す。差し戻しも多い
領収書を撮るだけ。読み取りから精算の申請までつながる
向いている会社:外回りが多く、経費精算が毎月の手間になっている会社
どう作ったか:領収書を撮る→金額と日付を読み取る→申請の形に並べる。⚠ 読み取りは100%にはならない。違っていたときにすぐ直せる形にしておく。
考え方を詳しく:手書き伝票をAIで読み取る
06メルマガの自動配信
書く人がいないまま止まる。顧客リストがあるのに使えていない
配信の仕組みを組んで、続けられる形にする
向いている会社:既存客のリストはあるが、接点が途切れている会社
どう作ったか:配信の仕組みを組むところまで。⚠ 中身をAIに丸投げしない。読まれるメルマガは、その会社にしか書けないことが入っている。AIは下書きと配信の手間を減らすだけ。
考え方を詳しく:生成AIで最初に自動化すべき“たった1つ”の業務
07ネット情報の自動収集
競合や相場を人手で見に行く。見る日と見ない日が出る
決めた情報を自動で集めて、手元に並ぶ状態にする
向いている会社:相場や競合の動きが利益に直結する会社
どう作ったか:見に行く先と項目を先に決めてから組む。⚠ 集めたあとに誰が見るかを決めておかないと、データがたまるだけになる。
考え方を詳しく:「AIで何ができるの?」に答える地図
※ 削減できた時間は会社ごとに大きく違うため、ここには載せていません。 ご自身の会社でいくらになるかは、無料の AI活用診断で、お会いした場でご一緒に数字にします。
作らなかったもの、お断りしたもの
ご相談をいただいても、作らないほうがいいと判断してお伝えすることがあります。 こちらは中小企業診断士なので、まず利益構造を見ます。 作ることが目的になった瞬間に、たいてい失敗します。
① その作業に、年間いくらかかっているか
月2時間の作業を自動化しても、年間で24時間。人件費に直すと数万円です。 そこに50万円は出せません。金額にすると、頼むかどうかが先に決まります。 計算の手順はAI導入にいくらまで出していいかに書いています。
② 既製品で足りるなら、既製品を勧めます
会計、勤怠、名刺管理、チャット。ここは既製品のほうが安く、早く、壊れません。 作る価値があるのは、自社のやり方が業務に深く埋まっていて、既製品に合わせると現場が止まるところだけです。 判断の分かれ目はAIツールは既製品か、自社で作るかにまとめました。
③ 作ったあと、社内で面倒を見られるか
動かなくなったときに社内で直せないなら、その前提で設計する必要があります。 外部のサービスに依存する部分を減らし、仕様が変わっても影響が小さい形にします。 ⚠ マクロ(VBA)を書ける人が1人だけ、という会社は要注意です。 属人化を減らすために自動化したのに、新しい属人化を作ることになります。
④ 判断が要る仕事は、自動化しません
接客、値決め、仕入れの目利き、交渉。その場の判断が要る仕事は向きません。 向くのは「毎日発生して、形が決まっていて、担当が一人に偏っている」作業です。 洗い出しの条件は中小企業のAI導入、どこから手をつけるかに3つ書いています。
この4つに1つでも引っかかったら、その場で申し上げます。 費用対効果が合わないものを作っても、使われずに終わるからです。
社員に使わせていいか、という相談も増えています
ツールを作る以前の話として、「ChatGPTを社員に使わせていいのか」という相談が増えました。 結論から言うと、全面禁止は現実的ではありません。 禁止しても個人のスマホと個人のアカウントで使われ、会社からは見えなくなります。
決めることは3つだけです。入れてはいけない情報/使っていい業務/出てきたものを誰が確認するか。 そのまま配れる形は ChatGPTを社員に使わせていいか。禁止する前に決める3つのことに置いてあります。
これは、国の調査でも同じ結論です
| 8割超 | AIを活用する目的は「業務時間の節減」。次いで「人手不足の解消」「業務の属人化解消」 |
|---|---|
| 約3割 | AI活用に取り組んでいる事業者の割合。ITツールの活用は約7割なので、AIはまだ3割 |
| 1位 | AIを活用しない理由は「活用する業務がイメージできていない」が最も多い。道具ではなく、対象業務が決まらないことが止めている |
出典:中小企業庁『2026年版 中小企業白書』第2部第2章第2節(第2-2-87/89/92/93図)。 AI活用の状況は(独)中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2025年11〜12月実施・有効回答1,668件)に基づく。
そして、効果を左右するのは道具選びではありませんでした。 同じく中小企業庁が、IT導入の効果が得られた企業を分析したところ、 労働生産性への影響が最も大きかった取組は「業務プロセスの見直しを合わせて行った」ことでした。 次いで「経営層が陣頭指揮をとった」「外部のコンサルタントを活用した」が続きます (出典:中小企業庁『2018年版 中小企業白書』第2-4-24図)。
「どの業務を自動化すべきか」が決まらないことが、いちばんの壁になっています。 そこを数字で決めるのが、無料のAI活用診断です。
順番を間違えなければ、効果は出ます
どれから手をつけるかは、この順で決めます。 道具の話は最後です。
| ① 時間を測る | どの作業に、誰が、月に何時間使っているか。感覚ではなく数字にすると、思っていたのと違う作業が上位に来ます |
|---|---|
| ② 金額に直す | その時間を人件費に換算する。ここで初めて「いくらの問題か」が見える |
| ③ 既製品を探す | 既製品で足りるなら、そちらを勧めます。作らないほうが安いことは珍しくありません |
| ④ 作る | 既製品では届かない部分だけを作る。納品して終わりにせず、社内で運用が回る形にします |
考え方は記事にも書いています。 中小企業のAI導入、どこから手をつけるか、 経営課題からAIを選ぶ、逆引きガイド、 既製品か、自社で作るか。判断が分かれる4つのポイント、 AIで人手不足はどこまで埋まるか。 ここに書いたことは、そのまま持っていって自社でやっていただいて構いません。
導入したあとの話も置いてあります。 入れたシステムが定着しない理由、 議事録づくりをAIに任せる、 機械学習でよくある勘違い、 自分で作ってみたAIの話、 作業効率の計算式と求め方。
費用
| AI活用診断 | 無料。事前の準備は不要。お会いした場で、業務の書き出しから優先順位づけまでをご一緒に整理します(60分程度・オンライン可) |
|---|---|
| ツールの開発 | 50万円〜(税別)。1つの業務を自動化する規模から。対象業務と要件で変わります |
先に人件費を数字にしてから、費用対効果が合うかを判断します。 合わなければ「やらないほうがいい」とお伝えします。 判断の材料がないまま見積りだけ出すことはしません。
よくあるご質問
- この一覧にないものも作れますか?
- 作れることのほうが多いです。ここに並べているのは、実際に納めて運用が回っているものだけです。同じ仕組みは、業種を問わず使えます。たとえば手書き伝票の読み取りは、建設でも小売でも同じ形で動きます。まずは「うちの場合はどうか」をお聞かせください。
- 作ったあと、壊れたらどうなりますか?
- 直します。ただし、そもそも壊れにくい形で作ることのほうを優先しています。外部のサービスに依存する部分を減らし、仕様が変わっても影響が小さくなるように組みます。社内に詳しい方がいない前提で設計しています。
- 費用はいくらですか?
- 1つの業務を自動化する規模で50万円から(税別)です。対象の業務と要件によって変わります。先に無料の「AI活用診断」で、どの作業に月いくらの人件費がかかっているかを数字にします。費用対効果が合わなければ「やらないほうがいい」とお伝えします。
- ここに載っているものと同じものが欲しいのですが
- 同じ形で作れるとは限りません。会社ごとに業務の流れも帳票の形も違うため、多くの場合は作り直しになります。ただし、これまで作った中で共通して使える部分は増えてきているので、似た業務であれば早く形にできます。まずは現状をお聞かせください。
- 社内にITに詳しい人がいません
- 構いません。むしろ、そういう会社のほうが多数派です。設計から開発、納品後に社内で運用が回るところまで一人で担当します。使う人が変わっても続く形にしてお渡しします。
まず、どこにいくらかかっているかを出します
AI活用診断は無料です。事前の準備は要りません。 「AIで何ができるのか分からない」という状態で結構です。 お会いした場で、業務を書き出すところからご一緒に整理します(60分程度・オンライン可)。 業務を細分化して人件費に換算し、効果の大きい順に並べます。