製造業の原価計算をエクセルで。まず分けるのは3つ
結論から、いきます。製造業の原価計算をエクセルで始めるなら、分けるのは3つだけです。材料費・外注費・加工賃です。
原価計算の本を開くと、直接費と間接費、配賦、標準原価と実際原価……と続きます。そこから入ると、たいてい表が完成する前に終わります。
必要なのは、「この仕事は、いくら残っているのか」が分かることです。今日はその形を置いていきます。
なぜ、3つに分けるのか?
集め方が違うからです。
| どこから取るか | 手間 | |
|---|---|---|
| 材料費 | 仕入伝票・発注書 | すぐ出る |
| 外注費 | 外注先の請求書 | すぐ出る |
| 加工賃 | 自社で何時間かかったか | ここだけ手間がかかる |
材料費と外注費は、すでに紙で存在しています。足すだけです。
問題は加工賃で、これは時間を測らないと出ません。逆に言うと、3つ目さえ手当てすれば原価は出ます。
加工賃の時間単価は、どう決めるのか?
1か月の加工にかかる費用 ÷ その月の稼働時間です。
【時間単価の出し方(例)】
現場の人件費(4人) 1,600,000円
機械の電気代・リース・償却 400,000円
────────────────────────────
合計 2,000,000円
稼働時間(4人 × 160時間) 640時間
時間単価 = 2,000,000 ÷ 640 = 3,125円/時間
⚠ 事務所の家賃や社長の役員報酬を入れないでください。入れると単価が跳ね上がり、見積が通らなくなります。それらは粗利で回収する固定費であって、加工の単価ではありません。
⚠ 1円単位の正確さは要りません。毎月、同じやり方で出し続けるほうが大事です。やり方が変わると、前月と比べられなくなります。
表は、どう作ればいいのか?
品目ごとに1行です。
| A:品番 | B:売価 | C:材料費 | D:外注費 | E:時間 | F:加工賃 | G:粗利額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| K-100 | 12,000 | 3,400 | 0 | 1.5 | 4,688 | 3,912 |
| K-200 | 8,000 | 1,900 | 2,500 | 1.2 | 3,750 | -150 |
- F列(加工賃) …
=E2*3125(時間単価は別のセルに置いて参照します) - G列(粗利額) …
=B2-C2-D2-F2
K-200は、1個作るたびに150円ずつ減っています。これが見えるかどうかが、この表の値打ちです。
⚠ 時間単価は、シートの上のほうに1か所だけ書いて、式からは $B$1 のように固定参照してください。式の中に 3125 と直接書くと、単価を見直したとき全部書き換えになります。
配賦にこだわると、なぜ続かないのか?
更新が止まるからです。
間接費を製品ごとに割り振る計算は、理屈としては正しいです。ただ、毎月、配賦の基準を見直して入れ直す作業が要ります。これが続いた会社を、私はあまり見ていません。
止まった原価表は、古い数字で判断させる分だけ、無いより危ないです。
⚠ まずは3つだけで回してください。粗利額の順番は、配賦を入れても入れなくても、ほとんど変わりません。順番が分かれば、打つ手は決められます。
出てきた数字で、何をするのか?
並べ替えるだけで、手が決まります。
- 粗利額の大きい順に並べる … 伸ばす先がここです。売上の大きい順とは、たいてい一致しません
- 粗利額がマイナスの品目を出す … 値上げの相談か、作り方を変えるか、断るか
- 時間あたりの粗利額(G ÷ E)で並べる … 設備と人が空いていないなら、こちらが本命です
⚠ 3番目が効きます。粗利額が大きくても、5時間かかる仕事より、1時間で終わる仕事を2本入れたほうが残ることがあります。
考え方は粗利は率ではなく額で見ると、町工場の利益が残らない理由に書きました。原価率の目安については原価率の計算方法にまとめています。
時間は、どうやって集めるのか?
ここが、いちばん続きません。
日報に書いてもらう形だと、忙しい週から止まります。そして止まった週は、二度と埋まりません。
現実的なのは、この2つです。
- 品番ごとの「標準時間」を先に決めて、実績は月に1回だけ確かめる … 精度は落ちますが、続きます
- 作業の開始と終了だけ、スマホから送ってもらう … 実際に、入力項目を削って1画面に収めた仕組みを納めたことがあります。項目を増やすほど入力されなくなります
工程の記録の形は生産管理をエクセルで自作に、6列の表で書きました。
ソフトを買ったほうがいいのは、どんな場合か?
4つあります。
- 品目が数百を超える … エクセルでは探すだけで時間を使います
- ロットごとに実際原価を追う必要がある … 材料のロット管理と結びつきます
- 工程ごとの実績時間を自動で集めたい … 設備からの取得が要ります
- 社内に、表の面倒を見られる人がいない … 壊れたときに止まります
⚠ 既製品が不要という話ではありません。まずエクセルで1か月回すと、自社に何が要るのかが分かった状態で選べます。
今日やること
紙に3行、書いてください。
① 先月の現場の費用(人件費+機械にかかった費用):__________
② 先月の稼働時間(人数 × 実働時間):__________
③ ① ÷ ② = 時間単価:__________
この3行が出たら、あとは品目を10個選んで並べるだけです。最初から全品目をやろうとしないでください。主力の10個で、傾向は見えます。
「うちはどんぶり勘定だから」と思われたかもしれません。大丈夫です。どんぶりでも、10品目だけ並べれば、必ず1つは赤字が見つかります。そこが直せれば、それだけで利益は変わります。応援しています!
よくある質問
製造業の原価計算は、エクセルでどこまでできますか?
品目ごとに「材料費・外注費・加工賃」を出して、売価と比べて粗利額を見るところまでは十分にできます。加工賃は「その品物にかかった時間 × 時間単価」で出します。逆に、製造間接費を細かく配賦する計算はエクセルで組むと更新が続かず、数字が古くなって使われなくなります。まず3つに分けて、粗利額の大きい順に品目を並べるところから始めてください。
加工賃の時間単価は、どう決めればいいですか?
1か月の加工にかかる費用の合計を、その月の稼働時間で割ります。費用は現場の人件費と、機械の電気代・リース料・減価償却費などです。事務所の家賃や社長の役員報酬まで入れると、単価が跳ね上がって見積が通らなくなります。まず現場の分だけで出して、月次で見直してください。1円単位の正確さより、毎月同じやり方で出し続けることが大事です。
エクセルで原価を出すと、何が見えますか?
品目ごとの粗利額と、赤字で受けている仕事です。売価から材料費・外注費・加工賃を引くだけで、どの仕事が利益を生んでいるかが並びます。多くの場合、売上が大きい品目と粗利額が大きい品目は一致しません。手間のかかる少額品が時間を食っていることも見えます。数字が出てから、値上げの相談先や、断る仕事を決められるようになります。
原価計算ソフトを買ったほうがいいのは、どんな場合ですか?
品目数が数百を超える場合、ロットごとに実際原価を追う必要がある場合、工程ごとの実績時間を自動で集めたい場合です。逆に、品目が数十で、時間の記録が紙か口頭で済んでいる会社は、エクセルで回してから選ぶほうが失敗しません。まず自作で1か月回すと、自社にどの機能が要るのかが分かった状態でソフトを選べます。
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